FEATURE

安田ジョージと「動物たち」

■そこにいるのに、見えないもの

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茂みの中の物音、夜の闇に響く声。犬だろうか、狸かもしれない。
そんな気配を感じた経験は、きっと誰の記憶にもあるはずだ。

しかし、姿は?
その体躯は、毛並みは、目の色は、鼻の形は、尾の長さは。


詳細に思い描こうと試みるほど、そのわからなさにはっとする。

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野生動物の存在は、私たちの多くにとって、近いようでやはり遠い。

そして、いざ「本物」を目の前にした時のその印象、その存在感は、ただ圧倒的だ。

そんな日本の野生動物たちの姿を、きちんと形にして見せると言う事。
否、姿だけではない。その存在感を。


「野生の動物は、尊いですよね。一匹一匹が気高い」
と、彼は言う。

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アーティスト安田ジョージ氏。
彼は自らの作品を、愛をこめて「動物たち」と呼ぶ。

「動物たち」は、彼の言う気高さをどこかにはらんで、すっくと立っている。

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思わず笑みがこぼれるような愛らしさの中に在る、野生動物としての威厳のようなもの。

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■いずれは土に還るもの

皮膚は手染めの布。四肢と頭は手彫りの木。たてがみは、麻の繊維。

全ては土に還っていく材質。私たち生き物と同じだ。

動物を立体物として作る前には、まず観察。
その量感、顔つき、筋肉の動き。
じっくりと見て、スケッチをして、自分自身の中へ落とし込んで行く。


そうしてから、粘土を使って胴体を作り、張りぼての要領で紙を貼りつけ、乾かし、切り取り、
それらを型紙として、布地を裁断する。
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布地は、自ら掘った土による染料や、柿渋、藍を使って染めた物が中心。染色家である奥様の助言を受けながら覚えていくのだと言う。


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表現したい質感によっては、さらに刺し子を施したり、型染めで毛並みを描いたりもする。


その作業と並行して、樫などの木材を削り出して、頭と四肢を作っていく。

洞察力といつくしみに溢れた細かな彫り目の、その愛おしさ

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これらもまた柿渋などの天然染料を使って色付けされ、乾かされ、やっと胴体と組み合わされて、一匹の動物の形をなす。

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工程は全て自己流。従って、道具も全て自作。


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「作り始めた頃は、どうしたら自分の作りたい物が形になるのかがわからなくて。

ああでもないこうでもないって・・・ものすごく時間がかかったりしていました。
今は、こうやったらいい、っていう自分のやり方が、
少しは見つかって来たような感じがしますね」


全ては、形にしたいという思いひとつ。

彼の中に棲む尊く気高い動物たちを、人が見て、触れる事の出来る、現実の存在にする事。

この独特な素材も、独特な手法も、全てはその欲求で辿り着いた現在地だ。

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■羊と山羊の、その交差点

この日、安田氏の工房を訪れていたのは、Eatable of Many Ordersデザイナー、新居幸治氏。

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「Eatable =食べられる」をキーワードに、天然素材の使用やコンセプトの深い追究を特徴とするこのブランドには、どこかしら安田氏の制作と通じ合うものがあった。


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そして偶然にもEatable of Many Ordersが次シーズンのテーマに選んでいたもの、
それは「羊」。

家畜動物としての羊は、その毛皮を衣服に、肉やミルクを食料にと、人間の暮らしにそれは多くの恩恵を与えて来た。

人間の暮らしと密接に関わってきた羊たちに思いを馳せた秋冬コレクション
'LIVESTOCK ; PASTORAL'。

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このコレクションの世界観を象徴するテキスタイルの端切れたちを、
Eatable of Many Ordersは安田氏に託してみる事にした。

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羊毛や綿、シルクといった天然素材を使ったEatable of Many Orders
独自の素材が、
安田氏の手によって再び  生き物の形に戻ろうとしている。


とは言え、すぐそこにいるかもしれない存在=「日本の野生動物」を題材にし続けて来た安田氏にとっては、
品種改良で生まれた家畜動物である「羊」は少し遠い存在だ。

そこで彼らが思い至ったのは、羊の原型、祖先である、あの動物。
おっとりと従順な羊に対し、気性が荒く手名づけられないと言われる野生動物。

羊とは似て非なる、しかし同じルーツで結ばれた、気高き獣だった。

まだ誰も知らない、その姿とは。

 

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2015年10月5日(月)~18日(日)
Eatable of Many Orders × 動物作家・安田ジョージ合同展示
「みぢかな動物たち」

水金地火木土天冥海では、10月の恒例となっているEatable of Many Ordersの秋冬コレクションと共に、
アーティスト安田ジョージ氏による「動物たち」の展示を初お披露目。

Eatable of Many Ordersのテキスタイルを使った特別合同作品の「山羊」が限定5頭のみ販売されます。

安田ジョージ氏、新居幸治氏 在店日
17日(土)14時~19時

 

※15日(木)~18日(日)青参道アートフェア

「芸術の月」である毎年10月、青山通りと表参道を繋ぐ「青参道」を中心に開催される青参道アートフェア。
青参道一帯のショップ、カフェに各々アート作品が展示され、
エリア全体をアートギャラリーのように楽しめる催しです。

初日となる15日(木)は21時まで営業致します。
18:00~ ささやかなレセプションパーティーを行います。


是非、お立ち寄りください。

 

(文・國府田真由 / 撮影・澤木美奈※一部除く)

 

 

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